
子どもに予防接種を受けさせたくない、という保護者の方は一定数いらっしゃいます。
「副反応が心配」「本当に必要なの?」という不安を抱く方も少なくありません。
当院は予防接種を推奨するクリニックですが、予防接種を「強制」するつもりはありません。
ただし、受けないことで起こりうるデメリットも知った上で、納得のいく選択をしてほしいと思います。
予防接種を受けないことで生じるデメリット
① 予防できるはずの病気を予防できなくなる
ワクチンによって防げる感染症(VPD:Vaccine Preventable Diseases)は多くあります。
麻しん、風しん、百日せき、ヒブ、肺炎球菌感染症などは、ワクチン接種により重症化を防げる病気です。
接種を受けないと、これらの感染症にかかるリスクが高まります。
特に乳幼児期は免疫が未熟であり、感染すると重症化しやすいのが特徴です。近年ではヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンも定期接種化しました。ヒトパピローマウイルスの感染を予防できる疾患は「子宮頸がん」です。悪性腫瘍も予防接種で予防できる時代になりました。
また、ワクチンは自分を守るだけでなく、周囲への感染拡大を防ぐ「集団免疫」の役割もあります。
地域全体の接種率が下がると、感染症の再流行が起こる危険性もあります。
② 公費の期間が過ぎると、全額自己負担になる
日本では多くのワクチンが「定期接種」として公費で受けられますが、その対象は年齢(月齢)で厳密に区切られています。
たとえば日本脳炎ワクチンの1期は7歳6ヶ月未満までしか定期接種として受けられません。7歳6ヶ月以降は全額自費となります。
もし対象年齢を過ぎてしまうと、1回あたり数千円から1万円以上の費用を自費で支払う必要が出てきます。
複数回の接種が必要なワクチンも多く、合計で数万円に達することも珍しくありません。
「とりあえず様子を見よう」と思っているうちに公費の期間を過ぎてしまい、後でまとめて接種しようとすると経済的負担が大きくなってしまうこともあります。
2025年10月時点で日本の定期接種で受けられるワクチンの総額は、以下の通りです。
定期接種のワクチンを自費で接種した時の総額(おぎくぼ小児科の料金で算出。地方自治体の助成や任意摂取は除く。)
男児・・・25万2300円
女児・・・30万7300円
もし、子どもが大人になって、予防接種を受けたいと考えた時、上記の金額が必要になり、大きな経済的負担となります。
金額の具体的な内訳などは以下をご覧下さい。

③ 将来の選択肢が狭まる可能性がある
子どもが成長し、将来「医療系の学校に進学したい」「海外留学したい」と思ったとき、予防接種が壁になることがあります。
医療系大学では入学時にワクチン接種の証明書を提出することが多く、未接種の場合は入学後に接種を求められることがあります。接種しない場合は実習に参加することができず、卒業できません。
また、海外留学では国によって定められたワクチン証明書がなければ、入国や授業登録ができない場合もあります。
つまり、「今は必要ない」と思って受けなかったことで、将来の夢や進路に制限が生じる可能性があるのです。
幼少期に接種しておくことで、将来の手続きや費用面での負担を減らすことができます。
最後に
「予防接種を打たない」と悩むのにはそれ相応の事情があると推察します。
しかし、接種することへの不安だけで決めるのではなく、「打たないことで何が起こるか」を正しく理解することがとても大切です。
※当院は予防接種を推奨するクリニックですが、予防接種を受けないご家族を非難することはありません。予防接種を受けない選択をした場合でも今まで通り、通常の診察を受けることが可能です。

