頭の形、いつから問題視されるようになった?

赤ちゃんの「頭の形」がこれほどまでに注目されるようになったのは、比較的最近のことです。
昔から赤ちゃんに“向き癖”は存在していましたが、それが「位置的頭蓋変形」として医学的に問題視され、治療の対象となるようになったのは、1990年代以降の国際的な動きに端を発しています。

年表でみる「頭の形」への関心の変化と制度の動き

1992年:アメリカで「仰向け寝」推奨が始まる

米国小児科学会が、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク軽減のために、赤ちゃんを仰向けに寝かせる育児法を推奨。
この「Back to Sleepキャンペーン」によりSIDSの発生率は40〜60%減少するという大きな成果が得られました。

しかしその一方で、「仰向け寝」によって赤ちゃんの頭の同じ部位がベッドに長時間接触し、後頭部が扁平になる「短頭症」や、向き癖による頭の左右差「斜頭症」が目立つようになります。1992年の仰向け寝が推奨されてから、位置的頭蓋変形を生じた赤ちゃんは400~600%へ急増したといわれています。

1998年:米国で「矯正ヘルメット」が医療機器に

米国食品医薬品局(FDA)が、頭蓋形状を矯正するヘルメットを初めて医療機器として承認しました。
これにより、単なる美容や民間療法ではなく、医療として頭の形を矯正する治療が本格的に始まりました。

2014年:日本でも制度的検討が始まる

厚生労働省にて「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」が開催され、日本でもヘルメット矯正治療をどう位置づけるかが議論され始めます。
この時点ではまだ日本では保険適用されておらず、医療機器としての承認も未取得の状態でした。

2018年:日本でヘルメットが医療機器として承認

厚生労働省が、ついに日本で初めて「頭蓋形状矯正ヘルメット」を医療機器として正式に承認。
これにより、医療機関での使用が法的にも明確となり、国内でも「頭の形を医療として整える」意識が大きく変化しました。

位置的頭蓋変形の広がりと実態

実際にどれくらいの赤ちゃんが頭の変形を経験するのでしょうか。

  • オランダの研究では、生後1か月時点で約8.2%の赤ちゃんに向き癖が見られると報告されています。
  • また、ニュージーランドの調査では、生後4か月時点で約20%の赤ちゃんに頭蓋変形が確認され、そのうち生後24か月でも3.3%に変形が残っていたというデータもあります。
  • 日本では2022年に報告された論文で、生後1ヶ月の赤ちゃんの50.0%に頭の形のゆがみがあり、生後6ヶ月時点で44.6%に頭の形のゆがみが残っていると報告されています。

なぜ「頭の形」が注目されるようになったのか?

SIDS予防という大きな公衆衛生的成果の一方で、副次的に生じた「頭の変形」の問題が浮き彫りになったことで、医療・育児の両面から“頭の形”に対する関心が高まりました。

とくに日本では、元々仰向け寝が当たり前だったこともあり、「絶壁」や「左右差」があってもさほど問題視されてきませんでしたが、インターネットやSNSの普及により海外の情報が身近になる中で、赤ちゃんの見た目や将来のために頭の形を整えたいという保護者のニーズが急速に高まりつつあります。

頭の形は“クリニックに相談する”時代へ

「頭の形」は成長とともに自然に整うこともありますが、早い段階での対応が有効な場合もあります。
少しでも気になることがあれば、早めに当院へご相談ください。

一人で悩まず、まずは専門家に話してみることが、赤ちゃんにとっても保護者にとっても安心につながります。

WEBからご予約いただけます。以下の「WEB予約」から「頭のかたち外来【初診】」からご予約ください。

ヘルメット治療について詳しく知りたい方はこちらのページもご覧ください。

参考文献

  • Marshall, Judith M, and Farooq Shahzad. “Safe Sleep, Plagiocephaly, and Brachycephaly: Assessment, Risks, Treatment, and When to Refer.” Pediatric annals vol. 49,10 (2020): e440-e447. doi:10.3928/19382359-20200922-02
  • Boere-Boonekamp, M M, and L T van der Linden-Kuiper LT. “Positional preference: prevalence in infants and follow-up after two years.” Pediatrics vol. 107,2 (2001): 339-43. doi:10.1542/peds.107.2.339
  • Hutchison, B Lynne et al. “Plagiocephaly and brachycephaly in the first two years of life: a prospective cohort study.” Pediatrics vol. 114,4 (2004): 970-80. doi:10.1542/peds.2003-0668-F
  • Miyabayashi, Hiroshi et al. “Cranial Shape in Infants Aged One Month Can Predict the Severity of Deformational Plagiocephaly at the Age of Six Months.” Journal of clinical medicine vol. 11,7 1797. 24 Mar. 2022, doi:10.3390/jcm11071797

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