
肺炎球菌ってどんな菌?
肺炎球菌は、子どもの鼻や喉にすみつくことがある細菌の一種です。
健康なときには問題がないこともありますが、免疫力が低下したときや乳幼児期には重い病気を引き起こすことがあります。
代表的な病気には以下のようなものがあります。
- 肺炎
- 中耳炎
- 副鼻腔炎
- 敗血症
- 髄膜炎(特に重症化しやすい)
特に、5歳未満の小さなお子さんが感染すると重症化しやすく、命に関わったり、後遺症が残ったりするリスクがあります。
なぜ肺炎球菌ワクチンが必要なの?
肺炎球菌による髄膜炎や敗血症は、ある日突然、元気だったお子さんに起こる可能性のある感染症です。特に肺炎球菌による髄膜炎にかかった場合には約2%が死亡します。また、10%に難聴、精神の発達遅滞、四肢の麻痺、てんかんなどの後遺症を残すといわれています。
このような重い病気を予防するために、日本では2013年に小児用肺炎球菌ワクチンが定期接種化されました。
接種が進んだことで、日本国内でも重症感染症の発症数は大きく減少しています。
他の定期接種ワクチンと同様、重要なワクチンのひとつです。
日本における肺炎球菌ワクチンの種類の変化
- 2010年 7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)日本に導入
- 2013年 7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)定期接種化
- 2013年11月 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)へ
- 2024年4月 15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)へ
- 2024年10月 20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)へ
7価とか13価とは?
肺炎球菌ワクチンについて調べていると、「7価ワクチン」や「13価ワクチン」といった言葉を目にすることがあります。
これは、そのワクチンが「何種類の肺炎球菌の型(血清型)」に対応しているかを表しています。
現在、日本の定期接種では「20価ワクチン(プレベナー20)」が使用されています。
これは、日本に肺炎球菌ワクチンが導入された時の7価よりもより多くの型をカバーできる改良版で、子どもたちを幅広いタイプの肺炎球菌から守ることができます。
なぜ対応する肺炎球菌の種類を増やす必要があるのか
肺炎球菌には約100種類の「型(血清型)」があります。
ワクチンは、その中でも重症化しやすい型を中心に予防する仕組みですが、接種が進むことで起こる重要な現象があります。
それが「血清型置換(けっせいがたちかん)」と呼ばれる現象です。
血清型置換とは?
ワクチンに含まれている型(例:13価ワクチンなら13種類)に対して、感染を防ぐ効果が高いため、これらの型による病気は劇的に減少します。
しかし一方で、ワクチンに含まれていない型が増えてくることがあります。
これは、空いた“居場所”に別の型が入り込むようなイメージです。
この現象は「血清型置換」と呼ばれており、実際にアメリカやイギリス、日本でも観察されています。
たとえばこんなことが起こっています
アメリカでは、2000年に「7価ワクチン(PCV7)」が導入されたことで、ワクチンで防げる型による重症感染(IPD)は約99.5%も減りました。
しかしその後、「19A型」などワクチンに含まれていない型による感染が増加し、特に19A型による重症感染は3倍以上に増えました。
日本でも同様に、PCV7の導入後、以前はワクチンで予防できていた型が急激に減少し、代わって19A型やその他の非ワクチン型による感染が増えてきたというデータがあります。
だからこそ、「13価」や「それ以上」が必要に
このような背景から、より多くの型に対応できる13価、15価、20価が登場してきました。
これらのワクチンは、従来の肺炎球菌ワクチンでは予防できなかった新たな型も含まれており、血清型置換による影響を減らす目的もあります。
「ワクチンがコロコロ入れ替わるのどうして?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、これはワクチンがしっかり効果を発揮している証拠でもあります。そして、医学の世界ではこうした変化にも柔軟に対応しながら、よりよいワクチンが日々開発・改良されています。お子さんにとって、今もっとも有効な方法を選んで接種していくことが、未来の健康につながります。
接種スケジュール(2026年時点)
肺炎球菌ワクチンは、生後2か月から接種を開始します。
通常は、以下のスケジュールで合計4回の接種を行います。
- 生後2か月:1回目
- 生後3か月:2回目
- 生後4か月:3回目
- 1歳:4回目
※接種が遅れた場合は上記と異なる可能性があります。月齢に応じて適切な回数やタイミングで対応できますので、ご相談ください。
肺炎球菌ワクチンの副反応は?
稀に報告される重い副反応として、ショックやアナフィラキシー、けいれん、血小板減少性紫斑病があります。よくある副反応は、以下のような軽度のものが中心です。
- 接種部位の腫れや赤み
- 一時的な発熱(38℃前後)
- 眠気、食欲の低下
いずれも数日で自然に治まることがほとんどです。
まとめ|肺炎球菌ワクチンで子どもを感染症から守ろう
肺炎球菌ワクチンは、子どもの命や健康を守る大切なワクチンです。
乳児期からしっかり予防接種を進めることで、重症化リスクを大幅に減らすことができます。
参考文献
- “子どもの肺炎球菌ワクチン”. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/pneumococcus-child/index.html(参照2025-06-21)
- Geno KA, et al. :Pneumococcal capsules and their types:past, present, and future. Clin Microbiol Rev 2015 ; 28 : 871-899.
予防接種の流れ
はじめての方でも、接種当日でもご予約できます。(ワクチンの種類によっては院内に在庫がないものもございます。その場合は当日ご予約されても接種できないことがあります。定期接種のワクチンであれば院内に在庫を確保しておりますので、当日ご予約いただいて接種を受けることが可能です。)お子様の場合は予防接種と同時に診察や乳幼児健診を受けることができます。
予防接種のタイミングや同時に打てる種類がわからない場合はご相談ください。
三種混合、不活化ポリオ、子宮頸がん、A型肝炎、髄膜炎菌、狂犬病についてはワクチンを取り寄せる必要があります。事前にご相談ください。上記ワクチンは取り寄せのため、キャンセル不可となります。ご注意ください。
37.5度以上の場合は接種できません。37.5度未満の場合は風邪症状(咳、鼻など)があっても接種できることが多いですが、最終判断は当日の医師によります。
予防接種のみ
- 健康保険証
- 医療証
- 母子手帳
- 予防接種の予診表(定期接種のみ)
※任意接種の場合は予診表は不要です。
予防接種と小児科診察
- 健康保険証
- 医療証
- 母子手帳
- 予防接種の予診表(定期接種のみ)
※任意接種の場合は予診表は不要です。 - お薬手帳
小児科診察と予防接種と乳幼児健診
- 健康保険証
- 医療証
- 母子手帳
- 健診の受診表
- 予防接種の予診表(定期接種のみ)
※任意接種の場合は予診表は不要です。 - お薬手帳
順番まで待合室でお待ちいただきます。
当院では感染対策の一環として下記のように待合室を分けております。
- 風邪症状(発熱、咳、鼻水、嘔吐、下痢など)を有する方 一般待合室
- 上記症状のない方 特別待合室
風邪症状のない方は特別待合室、風邪症状のある方は一般待合室で順番をお待ちください。
副反応の可能性を考慮し、予防接種から15分以内はすぐに院内に戻って来られる場所にいていただくようお願いいたします。

