
結論: RSウイルス感染症は、乳幼児に重篤な呼吸器症状を引き起こすことがあるウイルス感染症です。2歳までにほぼ全員が感染します。
- 基本的には風邪と同様に自然に治りますが、月齢の低い赤ちゃんは重症化しやすく、入院が必要になることがあります
- 早めに受診することは大切ですが、症状が出てから1週間程度でピークを迎えることが多く、保護者による毎日の観察が特に重要です
- 特効薬はなく、症状に合わせた治療(対症療法)が基本です
- 「飲みが悪い」「お腹がベコベコする呼吸」「息が速い」はすぐ受診のサインです
- 学校保健安全法による出席停止期間は定められていません
「子どもがRSウイルスと診断されたけど、どう対応すればよい?」「どんな状態になったら受診すればよい?」こういったご相談を受けることがよくあります。この記事では、RSウイルス感染症の症状・診断・治療・登園の目安をまとめて解説します。
RSウイルス感染症とはどんな病気?

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、全年齢で感染するウイルスです。国立感染症研究所の情報によると、1歳までに約50%、2歳までにほぼ100%の人が感染します。
健康な子どもや大人が感染した場合は、軽い風邪症状で自然に回復することがほとんどです。しかし、月齢の低い赤ちゃん(特に生後3か月未満)は気管支炎・細気管支炎・肺炎を引き起こしやすく、入院が必要になる場合があります。
特に注意が必要なお子さん
以下のお子さんは重症化リスクが高いため、より慎重な経過観察が必要です。
- 早産児・低出生体重児
- 先天性心疾患・慢性肺疾患があるお子さん
- 免疫不全のあるお子さん
症状はどのように出る?
潜伏期間は2〜8日です。発症後は以下の症状が現れます。
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 鼻水・鼻づまり | 初期から出やすい |
| 咳 | 徐々に強くなることが多い |
| 発熱 | 軽度〜中等度 |
| 喘鳴(ゼーゼー) | 重症化のサイン |
症状は発症から1週間程度でピークを迎えることが多く、これは早めに受診して治療を受けても変わりません。早期受診はもちろん大切ですが、それ以上に保護者が毎日しっかり状態を観察することが重要です。
こんな状態がみられたらすぐ受診を
- ミルク・母乳の飲みが明らかに悪くなった
- お腹がベコベコと引っ込む呼吸(陥没呼吸)をしている
- 呼吸が速い(多呼吸)
- ぐったりして元気がない
- 唇や爪の色が紫っぽい
どうやって診断する?
鼻の奥を綿棒でぬぐって行う抗原検査で診断します。
ただし、RSウイルスに特効薬がないこと・出席停止の規定がないことから、1歳以上のお子さんが感染した場合は、必ずしも検査して診断する必要はありません。周囲で流行していても、症状が軽ければ検査なしで経過観察することもあります。
治療法はある?
RSウイルスに特効薬はありません。咳・鼻水・発熱などの症状に合わせた治療(対症療法)を行いながら、お子さん自身の免疫力で回復を待ちます。
重症化して哺乳不良や呼吸困難が出た場合は、大きな病院での入院(酸素投与・点滴など)が必要になることがあります。
予防するためにできることは?

現時点では、乳幼児自身が受ける定期接種のRSウイルスワクチンはありません。(厳密にはワクチンではないですが、RSウイルスに対してRSウイルスの抗体を直接注射するお薬はあります。しかし、早産や生まれつきの心臓の病気などがないと使用できません。)
予防として最も有効なのは手洗い・咳エチケット・こまめな換気です。また、妊娠中に「アブリスボ(RSウイルス母子免疫ワクチン)」を接種することで、生後6か月未満の赤ちゃんへの重症RSウイルス感染症を予防する効果が期待できます。アブリスボは2026年4月1日から定期接種となりました。

登園・登校の目安はどうなっている?
学校保健安全法による出席停止期間は定められていません。以下の状態になれば、登園・登校を再開できます。
- 解熱している
- 普段どおりの水分・食事が取れている
咳や鼻水が完全に治まる前に登園・登校することは多いですが、咳で呼吸が苦しそうな場合は、もう少しお家でゆっくり過ごすようにしましょう。
よくある質問
Q. RSウイルスは毎年かかる?
A. 免疫は生涯続かないため、大人も含めて何度でも感染します。ただし、感染を繰り返すごとに免疫がある程度できていくため、2歳を過ぎると重症化しにくくなります。毎年はかからない人が多いですが、2〜3年連続でかかったことのある人は外来でも時折いらっしゃいます。
Q. 赤ちゃんがRSウイルスにかかったらどうすればよい?
A. まずかかりつけの小児科を受診しましょう。受診後は自宅で水分補給を心がけながら、「飲みが悪い」「呼吸がおかしい」などの変化を毎日観察することが大切です。症状が悪化した場合はすぐに再受診してください。
Q. RSウイルスに抗生物質は効く?
A. 効きません。RSウイルスはウイルスによる感染症で、抗生物質は細菌感染に使う薬です。対症療法(症状を和らげる薬)で自然回復を待つことが基本です。
Q. アブリスボを接種すると赤ちゃんはRSウイルスにかからない?
A. アブリスボは生後6か月未満の重症化リスクを下げることを目的としたワクチンです。感染そのものをゼロにするものではありませんが、入院が必要になるような重症化を防ぐ効果が期待されます。
Q. RSウイルスと診断されたきょうだいが家にいる。下の赤ちゃんへの感染を防ぐには?
A. 手洗いの徹底・マスク着用・タオルや食器の共用を避けることが基本です。感染した子どもが赤ちゃんに近づく機会を減らし、部屋を分けることも有効です。完全に防ぐことは難しいですが、早期に症状の変化に気づくことが大切です。
まとめ
- RSウイルスは2歳までにほぼ全員が感染するウイルスで、月齢の低い赤ちゃんほど重症化しやすい
- 症状のピークは発症後1週間程度で、治療を受けても経過が変わることは少なく、自宅での観察が重要
- 「飲みが悪い」「お腹がベコベコする呼吸」「息が速い」はすぐ受診のサイン
- 特効薬・基礎疾患のない乳幼児向け定期接種ワクチンはなく、対症療法が基本
- 手洗い・咳エチケット・換気が有効な予防策。妊婦さんはアブリスボの接種(定期接種)を検討しましょう
RSウイルスに関するご不明な点は、おぎくぼ小児科にお気軽にご相談ください。
参考文献
- 国立感染症研究所「RSウイルス感染症とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/317-rs-intro.html
- 厚生労働省「RSウイルス感染症に関する情報」
- 日本小児科学会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」



